職住一体からの気づき

コロナ禍で考える「家づくり」

アフターコロナを見据えて、リモートワークが薦められていますが、私は30歳で独立してから13年ほど、生活と仕事の場所を共にしてきました。大学の頃から一人暮らしをしていたので、家事に抵抗はなく、いまや料理は気晴らしになる趣味の一つです。職住一体の形をとったのは、住宅設計とは生活を作る仕事であるので、自分自身が実践者として、住宅の中に仕事場を置くことで、生活の中に新しい気づきを得たいと思ったからです。こうして長い時間を家の中で過ごしていると、周囲の風景や、家の中のものとの関係が親密になるので、窓の位置や断熱などの居住性、ものの魅力や使いやすさの重要性に気づきます。また、家族とはいえ、夫婦子供それぞれ考えの異なる者同士、家の使い方や感じ方も三者三様であるので、日々客観的な発見が生まれます。

こうしたリアリティのある生活体験が伴って設計する「家づくり」は、机上の計画学や最新の建築情報では決して作られない、生活の中で培う、ものづくり的な要素があると思っています。陶芸家が自身の器を生活の中で使いながら、誰かの新しい生活を生み出すうつわ作りに励むように、私もこれまで培った職住一体からの気づきを、設計に還元する事で、これからの住宅建築に繋げたいと、そういう思いをもって、家づくりに取り組んできました。

新しい職住の場に引っ越してきて1年半、新型コロナウィルスの影響で、外に出られない非日常的な生活が余儀なくされた事で、周囲の風景や家族の家での過ごし方、これまでの日常で気づかなかった事も見えてきて、「とのまビル」で設計した各部分の善し悪しを改めて別の視点で感じることできました。だからこそ、この期間に思ったことを書き記したいと思ったのです。

つづく。

物干しテラスから見た風景。
新緑が深まる裁判所の木々や、隣接ビルの外壁の表情。
周囲の風景の微細な変化を眺めています。

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