ビルに暮らす

コロナ禍で考える「家づくり」

私は’とのまビル’という、築30年ほどの古ビルをリノベーションした職場兼住居に住んでいます。「なぜ新築ではなくリノベーションなのか?」とよく聞かれますが、私は、家というのは他者によって作られる方が良いのではと思っています。客観的に家族の暮らし方や、周りの環境を見てもらう事で、生活の中で予期しない驚きや喜びが生まれます。自分自身で設計するということは、全てを主観的に計画することになり、答えがわかっている問題を解いているようで、こうした発見が生まれないのではと思っていました。

築30年ほどのビルをリノベーションした「とのまビル」。
2階が設計事務所で、3階からが住宅となっています。


そういうわけで、他の建築家にお願いするわけにもいかないので、当時の無名な設計者によって一生懸命考えて建てられたビルをリノベーションして家族の住まいを作ることにしました。計画していて分かったのは、建物の形状と窓の位置は、最大限この場所の良さを取り入れられていたということです。もともと酒屋さんの店舗兼住宅として建てられた事もあって、住まい部分の間取り、特に階数に当てる機能は、先の設計者にならい踏襲して計画しました。既存の建物部分は防水工事や現在の厳しい気候に適した断熱工事を行い、痛んでいた設備配管は一掃しました。内部については、家族の将来や、妻の要望やどのような子供になってもらいたいかなど、家族を持つ一人の父親として作っていきました。そしてできあがった家は、やはりビルならではの空間、自分では作れない場所が色々生まれ、完成後2年を迎えますが、日々発見がある家となっています。
新築、リノベーション問わず、「家族」と「家」の間には、こうした発見や気づきが生まれるような関係がいいのだと思います。

つづく。




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